キャラ立ちしまくりのカンフー拳士たち
当時のカンフー映画の「少林寺三十六房」や「スパルタンX」を反映し、「棒術使い」「鎖使い」「忍者カンフー」…加えて「火炎弾使い」「飛行術(気功?)」といったトンデモカンフーまでを網羅した、にぎやかなキャラデザが魅力の「イー・アル・カンフー」。
悪の拳法家集団「チャーハン一味」をこらしめるため、主人公が敵の館に乗り込みます。
一対一で順番で勝負してくれるあたりは、さすが悪人とは言え拳法家の矜持(きょうじ)、ということなのでしょうか。 おっさんども、どいつもこいつもいい悪人面をしてます。
飛び道具よりは体術がキレキレだった女拳士「ラン」
今回のイラストでは、色々迷ったんですが、やっぱり手裏剣つかいの「ラン」と主人公のマッチングにしました。
このラン、手裏剣攻撃が特技なんですが普通に格闘スキルが高く、特にアクセントで入れてくる「ハイキック」が何とも鮮やかで、印象深いキャラでした。 ビシッと足を伸ばし、低い身長を補って頑張って攻撃しているような感じが、本当に凛々しくも可愛いと思います。
他の棒術使いなどのキャラは、物陰で順番待ちです。みんな良いキャラしてるんですよねえ。
なお、キャラクターのカラーリングはパッケージでなくゲーム中のビジュアル寄せで描いています。 主人公のズボンはやっぱりピンクでないと。
背景ですが、改めて描いてみて思ったんですが、このよく考えられた「いかにもカンフー映画に出てきそう」なアートワークは凄いなと思いました。
背景が黒になっているのも、使える色数やグラフィック負荷とかも当然考慮しているとは思いますが、暗くて広いお堂で闘うという「カンフー映画っぽい」シチュエーションのイメージで、この黒バックがとても良い効果を出しています。
なのでそれに敬意を払うというか、こうしないとダメだろうということで、背景は黒のままにしました。 ファミコンとは解像度が全然違う上にパースの付いている背景なので、本来は背景に何か見えてるはずなんですけどね。
ファミコンのゲーム中の「あの感じ」を出せたんじゃないかなあと、結構自分では気に入っています。
格闘ゲームの必須要素がほぼ入った「原型」
さて、ゲームとしての「イー・アル・カンフー」ですが、これは横2Dの格闘ゲームの源流の1つとも言われる「レジェンド」ゲームです(他には「アーバンチャンピオン」とか「対戦空手道」なんかがあります)。
防御こそありませんが、間合い(リーチ)、高低差、タイミングといった「格闘の駆け引き」といった要素は最低限網羅されており、「対人(NPCですが)格闘」という新しい「概念」を生み出した作品の1つです。
現在の格闘ゲームも基本的には、このアクション中の「駆け引き」をゲーム化するというパッケージングです。
そしてこのゲームに足りないものを補強し、さらには「リアルに2P対戦」という大きな要素が加わって、今日の素晴らしい格ゲーがあるというわけです。
「イー・アル・カンフー」にはシンプルな画面と少ない技ながらも意外と戦略性があり、とび蹴りで間合いをつめて背後を取るのをベースに、自分なりの攻略方法を見つけるのが楽しかったですね。
敵の固有技がそれぞれあるので、それに特化して対応するのも面白かったです。
アポー・アポー! これまた良かったサウンドの数々
試合開始と共に始まるステージBGMのイントロは、一度聞いたら忘れられないですよね。 このイントロ、終わりで一拍余らせてあるのがまたニクいんですよ。
ゲーム中のBGM自体はプレイの邪魔にならないよう抑え目のメロディラインなんですが、これも一通り曲が終わるとまたあのイントロで再開。 その「仕切り直し感」がまた大好きでした。
それに、何と言ってもあの主人公の発声。
十中八九 ブルース・リー の奇声がイメージになっていると思いますが、音質、音程ともに微妙に「外した」というか、ちょっと「間の抜けた」感のある、あの「アポー!」がたまりません。あのファミコン画面の解像度的にも、この声のデフォルメ感が非常に適切に思います。
主人公にはこれといった必殺技もなく、スペック的には凡庸なキャラなんですが、この「アポー!」で思いっきりキャラ立ってますよねえ。 すごいことだと思います。
そんなわけで…
コナミはリッチなハードになって以降、あまり格ゲーでは奮わないイメージですが、個人的にはこれのHDリマスター版が出てほしいなあと思ったりします。
変にリアルに寄せるんではなく、あくまでデフォルメされた漫画チックなディレクションでなにとぞ…ぜひ…。