ファミコンならではの可愛いカッコ良さ。動かしてて楽しかった!
遊びは横スクロールのシューティングゲーム。 上空での空中戦と地上目標への爆撃が目的な戦闘機乗りのゲーム。
こう言ってしまうと単純な気がしますが、これに向けての工夫というかアイデアというかセンスが、当時にしては飛びぬけていたと思います。
ジェット機でなく「レシプロ機」
音速超えのジェット機ではいわゆる「空戦」はそうそう派手には出来ません。 一回転するだけでも何百~何千mも移動してしまいます。
攻撃手段もほぼホーミングミサイルで、自分のエイム(狙い)で撃墜、というにはちょっと難しくなってきます。
ファミコンという、4:3のブラウン管テレビサイズで、 16x16ドットのキャラクターが戦うゲームとしては、レシプロ機のスピード感がちょうどいいですね。
また、小さい径の宙返りを基本スキルにしたことで、横スクロールのスピードを遅くしても宙返りのクイックな印象のおかげでスピード感が損なわれないという、演出上の利点があります。
このあたりは、メガドライブの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」でも、横にハイスピードで走った先で宙返りをさせるループ地形がある演出に、共通する物があると思います。
道のりを速く移動するだけでなく画面内を速く動くことが、2Dゲームでは効果大な場合があるかと。
スクロールの方向が「右から左」。独特な構成の良さ
人間の受ける心理として「右から来るものは強い」「左から来るものは挑戦者(弱い見立て)」があるのですが、 これは世界中の演劇や舞台、そして映画や漫画で演出技法として使われる「上手」「下手」の考え方です。
つまり、このゲームは「強大な悪の帝国に挑む~」的なものを推していくようなゲームではなく、「かっこいいスカイキッド達の活躍を見よう!」というヒーロー劇な意図のゲームなんです。 自分がうまいプレイをすることでもっともっとかっこいい主人公が見られます。
まあ、ファミコン時代のゲームなので序盤以降どんどん難易度きつくなってきますが、そのことで世界観を作っているわけではありません。
あくまでメインは「カッコいいスカイキッド」。 そこが子供時代の自分には、よくはわからずも刺さりました。 とにかくカッコいいゲームだったという、そういう思い出のゲームです。
…でもこのスカイキッド以降、横スクロールゲームは基本「左から右へ」になります。
それは「敵は強大」「恐ろしい敵の弾をより警戒」という作り手の意図と、これまた人間の心理というか習性で「右から来る物の方が動きを把握しやすい」というものがあるので、難易度を上げても遊び手が比較的対応しやすい…というのが働いていると思います。
「グラディウス」「ダライアス」「R-TYPE」といった、それぞれ「オプション」「オーラ状バリア」「ビット」という、『概念』を生み出したレジェンドゲームは置いておくとして、それ以外の横シューティングゲームって、自機より敵とかボスの方が記憶に残ってません?
「やれること」と「やっちまうこと」が多彩なこと
「シンプルなゲーム」と書きはしましたが、ゲーム上のスキルや仕掛けはシンプルですが、それで組み立てられる遊びはとても多彩です。
「宙返り」はただの演出ではありません。 宙返りと言っても「の」の字を描くような軌跡で、「緊急回避」や「敵への距離を詰めるステップ」でもあるんですね。 生存はもとよりハイスコアを目指すには多用しないといけないスキルです。
ちょっとした茂みや地表のチアガールの近くで宙返りをすることで、隠しボーナスなんかもあったりして、もう、無駄にクルクル回ってるだけでも楽しいんですよ。
でも、調子に乗って回ってると、その独特な軌跡を読みきれずに敵に接触してしまったり、地面に激突してしまったり。
そしてゲームが進行していくと地面に爆撃用の爆弾が現れます。 これをピックアップして、まもなく出てくる固定目標(戦艦だったり基地だったり飛行船だったり)に投下するわけですが、これがまたカッコいい。
爆弾が出てきたってことは上記の固定目標が近いということですから、緊張が走ります。 これを破壊するとしないとではスコアが雲泥の差です。 そして実際、これをうまく決めた時の爽快感といったら…映画「STAR WARS」のデススター破壊のあれですよね。
そんな緊張感ありつつカッコいい爆撃モードですが、前述の「宙返り」をすると、爆弾を落としちゃうんですよね。
ザコ敵に追い詰められたり、固定目標に近づきすぎて対空砲火をモロに食らったりして、思わず宙返りをしてしまって爆弾を落っことしてしまったとき、ここでも
……となるわけです。
この「やれること」と「やっちまうこと」のバランスがとても良いんですよね。
偉そうに言えば「ゲームの駆け引き」とか言うんでしょうが、そんな小難しい言葉を並べずとも、「スカイキッド」は遊びで教えてくれます。
子供時分の私はうまく言えませんでしたが…
今みたいに自分なりの理屈づけもできず、ただ繰り返し遊んでいただけの子供時分の私でしたが、うまく言えないけど「スカイキッド」には何か他のものと違う良さを感じていました。
ウルトラマンや仮面ライダーのようなカッコよさとはちょっと違う、ゲームデザインの「センス」に惹かれていたのかもしれません。
平成以降の感覚で言えば、「スカイキッド」は『クール』だったんだと思います。
目の付け所が人と違う上に手段が洗練されていて、それでいてそれを気取らずに見せてくれる…。
昭和の時代と比べて、ゲーム一本作るのに何百倍もの人とお金が動くようになってしまった今、涼しげにそんなすごいゲームを作ってしまうのは大変だと思いますが、またこういう振り返って嬉しくなるゲームに出会いたいものです。