「ちびせみ」本編の第一話。
やや暗いトーンでやってきた若い夫婦ですが、ちびせみのパンツドタバタと「魔法」への驚きで、すっかり毒気を抜かれて気を楽にできたようです。
ひっそり暮らすために、街外れで野中の一軒家に越してきたというのに、まさかの「魔法で繋がった」お隣さんができてしまいました。 善意にあふれた人達のようではありますが、さて。
何か影のある彼女達。 ふたりの抱えている問題の解決をもって本作は最終回を迎えると思いますが、どうなんでしょうかね。 とにかくずっとずっと先の話でしょう。
ところで、ちびせみママは記憶を先取りした結果、漠然とですがこの「ご近所づきあい」が何か大切な物になると信じた様子。
その理由を「お隣さん」に説明しますが、ふたりには意味がまったくわからず。 わからないまま受け入れてますけど。
実際、一瞬で自分を未来バージョン(バーサン)にして、一瞬で元に戻せるような人達の記憶とか思考なんて想像もできませんよね。 そもそもこの人達に「今」とか「未来」って意味があるんでしょうか。 「うっかり大切なものを大きくしちゃう子供時代」……わかるようなわからないような……いや、わからないですねさっぱり。
ていうか、あんなことができる魔法使いが、普通の人間同様に暮らしてること自体も不思議と言えば不思議。 経済活動すら不要なような。 何でも大きくして使ったり売ったりすればいいわけですから。 うらやましい。
何でだろう、変だなあ。 時折り理解できたようなエピソードや事件が起こるものの、やっぱり肝心な所が腑に落ちない……。 この漫画はむしろ、その腑に落ちなさを軸にしてずっと描いていきたいなあと。 不思議なものは不思議なまま。
良く言えばしみじみ、平たく言えば地味なファンタジーになると思いますが、丁寧に描いていきますので宜しくお願い致します。
制作日誌:1ツールで漫画制作はまだちょっと無理…
まずは、昔からやりたくとも機会が無かった「Flashブラシ作画を軸にした漫画制作」から。 1~2Pならやった事あったんですがちゃんとした中編では未経験で、漫画制作のフローとしてアリなのかが不透明でした。
Flashのブラシは何にせよ「清書向き」で、下書きやネームとの相性は最悪。 これまでそこの部分だけどうしようかなと悩んでいたところに、 iPad pro と Procreate との出会いがありました。 それが「またFlashで漫画描いてみるか」と思うきっかけになりました。
で、今回は下図の左側のような感じで進めてみました。
中編だとページ数も多くて完成までに時間がかかり、結論が出るのもまた時間を要してしまいます。 なので上達のためにちゃんと「完成品」として終わらせていく小さいコンテンツ「レトロゲーム絵日記」も並行で進めました。 そうすることで、iPad pro + Procreate の良いスタディにもなるだろうなあと。
「レトロゲーム絵日記」は描いてて自分も楽しかったです。 ぜひ皆さんにも見て読んでいただいて、私と同じ熱さで面白がったり懐かしんだりしていただきたいですね~。=D
Flash作画は時間かかり過ぎ!
とにかくFlashブラシでのキャラペン入れは時間がかかって難儀しました。 別の制作日誌でも書きましたが、1キャラ描くだけで30分かかり、1ページ描くのに1日かかりました。
とはいえ、途中からツールを変えたら描線が変わってしまうかもしれないですし(杞憂でしたが)、そもそもこれは前からやりたかった実験でもあるわけで……。
結局、背景もFlashでやるつもりだったのを、急遽Procreateに逃がして進行しました。 下書きまでは Procreateで描いて清書をFlashでと思っていたんですが、やめやめ。 結局 Procreateで清書。 でもまあ、これは正解だったなあと思います。
並行で Flash 以外のペン入れツールを模索
というわけで「ちびせみ本編」のキャラペン入れだけは、もう腹をくくって最後まで Flash でいくことに決めましたが、今後の……言ってみれば善後策を考えなければいけません。
とりあえず手元にあるツールは Procreate と メディバン。 こちらを使って何作か短い漫画を描いてみました(ワク線引きだけFlash)。
それを経ての所感は、以下の通りです。
Procreate
Procreate(iPad pro) は、前から下書きで使っていたので、キャラペン入れ(清書)は全く問題無し。これはいけます。
何と言っても余計なツールウインドウが何も表示されないので、 iPad Pro の画面がまるまるキャンバスとして使えてストレスフリーなのが良いです。↓ Procreate 作画中のスクリーンショット。
昨今の作画支援機能を沢山使おうと期待すると今ひとつですが(それでも結構あるけど)、少なくとも、単に線画を描くだけなら Procreate は最強に思えますね。
ただ、やっぱり2値レイヤーが使えないので、拡大縮小でのぼやけが惜しいです。 ていうか2値ブラシすら無いので、印刷向け原稿を描こうと思ったら、いったんPhotoShopで読み込んで2値化しないといけないんですよねえ。
メディバン
メディバン(iPad pro)は悪くは無いのですが、3点透視の定規が無いのである程度大きな背景はちょっとしんどい。 それと、Procreate に慣れてしまうと、画面に表示されるツールウインドウがとにかく大きく思えて邪魔。 描画領域を圧迫します。 せっかくの iPad pro のディスプレイが、常時 2/3 も使えないのが非常にストレスでした。
ただ、メディバンには2値ブラシと2値レイヤーがあるので、そこは重宝。 Procreate でペン入れをした後、斜線を入れたりちょっとした小物を配置したりするのに多用しました。
また、Procreateよりも選択範囲の取り回しが非常に漫画向けでやり易かったので、部分的に斜線を入れたい時なんかには重宝でした。
結局……
基本的には Procreateでペン入れすることに。 斜線での陰影づけや、背景のよごしなんかはメディバンです。 メディバンはこれまでもスクリーントーン貼りで重宝してきたので、やっぱり「仕上げ」「飾りつけ」に使うのが、私には合っているようです。
Flash :キャラペン入れは一歩ひきつつ、支援で光らせる
Flashはやっぱり描線が綺麗だし、 作りこもうと思った時の修正を入れられる自由度は他にない長所です。
ただ、絵を量産しないといけない漫画には、やっぱり不向き。慣れれば何とかと思いましたが、26ページ描き切ってもやっぱりつらい。 今後は表紙とか、1カット丁寧に描きたいとか、そういう時のペン入れ用と割り切った方が良さそうです。
ただ、それはペン入れだけの話。
Flash はワク線を引くのに重宝なのと……
私好みの「描き文字」を描くのにとても重宝なのです。
「塗りの境界線を縁取って描き文字にする機能」はメディバンにもクリスタにも恐らくあると思うんですが、Flash の描き文字の真骨頂は「ベクター線の切り貼りで成型」と「ベクターでのゆがみ変型」。 後者は、確かクリスタのベクターレイヤーでならできたと思うんですが、前者はどうでしょうね。
綺麗な輪郭線で、コマの構図や絵に合わせて、後から自在に拡大縮小とパース付けができるので、本当に重宝。 これは Procreate にも メディバンにもできないこと。
そんなこんなで……
結局、右下の「となりの/実家のちびせみちゃん」でのワークフローが、今のところの私の最適解のようです。 Flash でのペン入れを Procreateに持って行っただけ。 対症療法な感じですが悪くはないかと。。
こうして、Flashブラシの可能性を「ちびせみ本編第一話」で模索しつつ、必要なスタディや善後策を「レトロゲーム絵日記」や「となりの/実家のちびせみちゃん」でフォローして進めてきて、何とか自分なりの「今後の漫画制作フロー」ができました。
本当の本音を言うと、この模索を進めていったら「Flash作画でも慣れればだいじょうぶ!」とか「メディバンだけで作業が完結する?」といった顛末を期待してたんですが、そのどちらも残念賞という結果に。 中々うまくはいかないものです。
実のところ、もうこれ以上スタディや試作はしないで、さっさと漫画を量産していきたい所なのですが、今後も1つ描くたびに何か1つ試すなどで改善していきたく思います。
……持っていないクリスタが妙に存在感高いんだよなあ……(以前、無駄にお試し版DLして期限過ぎてしまった)。
というわけで、以上、ちびせみ第一話、最後の更新での制作日誌でした!
メインである漫画の方に力を注いでいければと思いますが、漫画と制作日誌をあわせて読む事で、また違う面白さが得られるよう両方頑張っていこうと思います。
引き続き宜しくお願いします!