吉野屋、行くと何だかホッとします。
こういうコラムを書くまでは気にしたことなかったんですが、吉野屋って余計なものが無いんですよね。 ゴチャゴチャしてなくて落ち着きます。
たかだか牛丼屋で一食500円の客単価のファストフードチェーンのくせに(失礼)、何か内装がちょっとだけ大人です。
私にとって、牛丼チェーンでの食事ルーティンの中で、もろもろをリセットしてゆっくり牛丼を楽しむ店、それが吉野屋なんです。
ただシンプルに「牛丼屋」と呼ぶなら吉野屋かな
私の好きな「すき家」「松屋」「なか卯」とかとは一線を画しているのは、内装、特にテーブルのすっきりした感じ。
調味料系は紅しょうがと七味、後は醤油のみ。 テーブルの上にファストフードっぽい乱雑さが無いんです。(ちなみにドレッシングは、サラダを頼むと使いきりの物が個々に付いてきます)
じっさいはファストフードなのに、なんていうか「食堂」の雰囲気なんですよね。 もっと言うと「まかない場」みたいな感じで、いい意味で地味。
ドレッシングやタレなど、数々の調味料が並んでいるテーブルもにぎやかで好きなんですが、そういうほかの牛丼屋チェーンの中にあって、ひとつこういうシンプルなお店があることって、何か安心するんですよね。定期的に行きたくなる。
読み物でも、「小説」があって「ラノベ」があって楽しいのは大事ですが、根本に「文学」が……
って、牛丼の話に文学も何もねーよと(笑)。
ともあれ、ほんとに吉野屋の「牛丼を食べる場所」感は際立ってると思います。 結構アニメとのコラボとかも普通にやっていてポスターとかも壁に貼ってはあるんですが、それでもうるさく感じない。
ただシンプルに、余分なものがない「牛丼屋」。 それが吉野屋というイメージなのです。
ここはとにかく牛丼。シンプルでやさしい味わい
吉野屋は、他の牛丼チェーンと比べて牛丼以外のメニューが少ないです。 期間限定メニューは結構頑張ってますが、通常メニューはいたってシンプル。
私も「牛鮭定食」は結構好きとはいえ、吉野屋では牛丼以外を食べることはあんまり無いです。
吉野屋の牛丼は、みりんの甘さともまたちょっと違う、あっさりな甘さが好きですね。 甘さが控えめなのとはちょっと違う。 甘さの質があっさりしてるというか。
白ワインがどうだとか、私にはよくわかりませんが、この甘さは私の好みストライクです。
あと味には関係ないですけど、丼のデザインが、発色良いのに落ち着いた感じで好き(笑)。
生卵は必須にしたいですね。 よく合います。
で、吉野家って、生卵頼むと器に割りいれた状態で提供されるんですよね。 これは人によってはちょっと敬遠ポイントかもしれませんが私は気に入ってます。
ほかの牛丼チェーンだと卵のカラを入れる器と中味を入れる器で2つ出てきますが、これだとお盆の上がすっきりします。
牛丼「が」食べたいなら……
というわけで、数ある牛丼屋チェーンの中での、私にとっての「吉野屋」の立ち位置は、
牛丼「が」食べたい時に行く店、です。
「牛丼『でも』食べに行くかー」ではなく「牛丼『が』食べたい」。
他のチェーンの牛丼が吉野屋に劣るという事は決して無いんですが、私的に吉野屋って「牛丼のフォーマット」の味なんですよね。 「いわゆる牛丼」の味。 「牛丼欲」なるものがあるとしたら、イコールで欲しくなる味。
そういう「牛丼欲をストレートに満たしてくれるお店」として付き合えるのが、私にとっての吉野屋なのです。
皆さんも、最古参の牛丼チェーンとして、シンプルな牛丼をひたすら味わうために一度訪れてみてはいかがでしょう?
私の思うところを、少しでも共感してもらえたら嬉しいです。
以上、牛丼絵日記「吉野家」でした!
(おまけ)吉野家に思うこと。不器用な御仁。
吉野家について別途思うこと。 それは不器用さです。
狂牛病のとき
狂牛病騒ぎがあって、US産牛肉の輸入が厳しくなった時、その肉にこだわってずっと牛丼を出さず、豚丼で凌いでいたのが吉野屋でした。
驚くことに、5年もの間、吉野家は牛丼を売らなかったんです。
結果的に、それが他の牛丼屋チェーンの追随を許す要因の1つとなり、業界シェアを損ない、赤字も出すことになりました。
ぶっちゃけ、その期間だけ別の牛肉使えばよかったのになと当時私は思ってましたね。実際よそはそうしてましたし。
あれから20年たった今、あの判断が結果的によかったのかどうかはわかりません。 ただ、「実」は損なったかもですが、吉野屋のブランドイメージという「名」は守れたようには思っています。
そんな吉野家のまじめで無骨……というよりは敢えて「不器用」なところ、私は好きでいます。
「キン肉マン」との離別
昭和生まれの「キン肉マン」世代とくれば、「牛丼一筋300年~」のあの歌で、吉野屋は「キン肉マン御用達」としてずいぶんと刷り込まれたものでした。
あれって、吉野屋からキン肉マンアニメのプロデューサーにお願いしてやってもらったことだそうで。 その見返りは、アニメ制作陣に対しては情報がありませんが、漫画原作の作者さんには高級牛丼の無料券3枚と名前入りの特製どんぶり(ご本人曰く、これ持参で永久に牛丼無料という話)がもらえただけだったようです。
まあ、吉野屋は当時かなり苦しかったですし、ある意味ちょっとした昭和のイイ話と取れなくも無いかもですね。
キン肉マンの、あの当時……吉野屋というか牛丼屋チェーン自体がまだそんなに流行ってなかったところに、全国区の漫画とアニメで大きく宣伝された影響力ははかりしれなかったでしょう。
この経緯については、こちらの記事が詳しいです。
漫画原作者「ゆでたまご」の原作担当、嶋田さんによると、元々キン肉マンの贔屓のお店は内部設定的には「なか卯」だったらしいのですが、キン肉マンのアニメ化の時に吉野屋からのお願いがあって、それを受けてそうしたのだとか。
このキン肉マンのアニメに、吉野家は最初から最後まで一度もCMを出さずスポンサーになりませんでしたが、当時の吉野屋は倒産~再建の時期でしたし、難しかったのでしょう。(ていうか吉野家がキン肉マンにCM出してたら、ステマというか宣伝アニメみたいで嫌味が出てたと思います)
なのですが、吉野屋は経営を立て直した後も「キン肉マン29周年」イベントへのコラボ参加とスポンサードを、誘われた上で断るという微妙な不義理をします。
さらに原作者さんが、くだんの「永久無料の丼」を店舗で使おうとしたところ、普通に断られて恥をかくという事案も起こり(しかもその様子はTVで放映)、吉野屋はキン肉マンとの関係を壊してしまいました。
なお、上述の「キン肉マン29周年」イベントでは、結局後から名乗りを上げた「なか卯」がコラボしました。 内部設定的には(作者さんが言う分には)もとのサヤに戻ったと言うべきなんでしょうが……。
この流れを見ていた私は、吉野屋にもキン肉マンにも、結構がっかりしたものです。
とはいえ、私はこんな不器用な吉野屋がやっぱり憎めないんですよね。 わびいれて仲直りするみたいな美談は起こりえないものですかねえ……。
※吉野屋とキン肉マン(ゆでたまご嶋田氏)との確執は、吉野家サイドの言い分について情報が出ていないので、経緯については鵜呑みにして信じないほうが良いかもです(念のため)。